近年の急速な経済成長により中国の世界でのプレゼンスが高まる中、中国は会計・税務・法律制度等の導入を進め、M&Aを行う環境が整ってきている。しかし、やはり中国は多くの点で日本と異なる文化・習慣・歴史を持つ国であり、思うようにM&Aの交渉手続が進まないのが実情だ。そこで今回は、現場のM&A担当者が肌で感じる中国特有の事情を紹介する。

➀許認可制度とライセンスの確認の必要性

中国でビジネスをする上では、あらゆる所で許認可を意識しておく必要がある。有効なライセンスの有無は対象会社の価値に多大な影響を与えるため、M&Aの入口で明らかにしておくことが重要である。現在およそ1700種類の許認可手続が必要とされており、この様な許認可手続に対する権限を持つ官僚組織が賄賂等の不正の温床になっているとの批判もあるため、5年以内に3分の1で許認可を廃止するとされているが、現在のような状況はしばらく続くと想定している。

➁対象会社の属性と許認可

中国のM&Aの一般的な手法は、持分譲渡と資産買収となる。当然のことながら、日本企業が資産買収をする場合には既存の子会社などを利用することが必要となる。対象会社に既に外国資本が入っている場合には、外商投資企業(合弁企業・独資企業)に分類され、外国資本が入っていない場合には、内資企業となるなど、対象会社の属性によって必要な内部手続・許認可が変わることに留意していただきたい。

➂対象会社に国有資産がある場合の留意点

中国は社会主義市場経済という独特の政策を採用しており、国民の共有財産である国有資産を厳格に管理している。国有資産となる出資持分を買収の対象とするM&Aでは、資格を持った資産評価機関に依頼をして、評価を取得することが必要となる。さらに、この評価額の90%以上の価格での売買が原則強制されるなどの規制があり、これを利用して不当に高く評価される可能性に注意しなければならない。また、公開入札を採用しなければならないなど、持分優先購入権の意義が薄れるような規制があることにも留意が必要である。

➃オフショア経由の買収の留意点

実務上は中国企業に投資しているオフショア(香港、ケイマン、BVIなど)のホールディング・カンパニー(シェル・カンパニー)を買収するケースに出会うことがある。日本ではあまり見慣れないストラクチャーであるが、匿名性を確保して海外に資産を移転するためや、出資者に外国株主を入れることで外商投資企業として租税減免措置を受けるためなど、様々な便宜のために利用されている。
この方法は、買収が中国国外で行われるため当局の許認可などが原則として不要である。ただし近年は中国税務当局も租税回避スキームに目をつけているため、実体のないオフショア・カンパニーを買収する場合には注意が必要と考える。

日中M&Aの留意点 – フロンティア・マネジメント株式会社より